暇日記

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漫画『カグラバチ』1~3巻感想。お前はジャンプの柱になれ!

 

連載開始時から気になっていた『カグラバチ』だが、いつか読もう、いつか読もうと思っていたら、いつの間にやら連載1周年が経とうとしていた。

『ヒロアカ』も終わり『呪術廻戦』もあと数話で終わるとのことで、『ワンピース』『あかね噺』くらいしか読まなくなりそうな予感がしているが、流石にもうひと作品くらい"ジャンプを読む理由"があっても良いんじゃないかと思い、重い腰を上げて読んできました。

 

幸い、既刊3巻というコンパクトさからくるネタバレの無さには大いに助けられた。このご時世、大体7,8巻以上続いていたらネットの何処かでネタバレを食らう可能性が高まるし、アニメ化なんぞされていたらほぼ100%食らう。

そんでもって、まだ読んでない人は是非ともネタバレされる前に読んで頂き、この瞬間最大風速を存分に味わって欲しい。引き込まれる絵やセリフが少なからず存在するだけに、これらを知らない状態で読むのが望ましいと思う。

 

ということで以下より感想を書いていく。未読の方はブラウザバックして今すぐ購入・読破してきて欲しい。

 

カグラバチ 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

かんそう

本作で印象的なのは、ひとつは展開の速さ

 

具体的には「コマの圧縮」というか、平成中後期頃までの漫画だったら平気で丸1話使いそうなネタを、僅か数ページで描いてしまう、そういう意味での速さである。

ただ決して雑になっているワケではなく、そのイベントに不要なものを極限まで削ぎ落とし、必要なシーンを圧縮し、落とし込む。基本的なことのようだが、この点においては2巻以降で加速度的に良くなっている部分であり、見応えのあるコマ・ページが明らかに増えた。

 

そして、速い展開だけでなく、敢えてゆっくりとしたコマ・ページの使い方がされている場面もあり、その緩急に現在進行形で翻弄されている。

モブ戦闘は物凄いスピード感で敵を蹴散らす様子として殺す工程を圧縮して描き、強敵との戦闘でも軽い手合わせの段階ではスピード感重視で描きつつ、読み合いの段階ではまさに「達人の感覚」とでもいうべきゆっっっくりとしたスロー感で描かれ、最期は「勝負は一瞬」とばかりにバサッと一太刀で雌雄を決する。

戦闘以外でも、状況説明やキャラ説明の場面を「ここは重要ではありません」とばかりに圧縮し、そのぶん回想や「親父の教え」をガッツリと丁寧に「ここは是非注目してくださいね!」とばかりにゆっくり何度も描く。

 

冒頭では「展開の速さ」と称したが、僕が最も印象的だと思っているのは、実は緩急なのかもしれない。そして緩急の使い方が上手い漫画は、読んでいてとても引き込まれる。それこそこんな感想を書いてしまうくらいには夢中になってしまう。これで作者は新人さんらしいので末恐ろしい。

 

そんでもって、この緩急に加え、極めて短期間に瞬間最大風速が何度も訪れるのがこの漫画の面白いポイントである。週間漫画ならばある程度普通のコトだけど、本作はより特化している印象。

横軸(いわゆる"溜め"のストーリー)の話を深く描かず、ひたすら縦軸!縦軸!縦軸!実戦!実戦!実戦!とすることで、クライマックス!クライマックス!クライマックス!が生まれ、ストレス無くいつの間にか最新刊まで読み終えてしまっている。時間が溶けちゃう。

当たり前だが閑話休題も必要無くなるため、その余白分を使って前述した緩急を存分に活かせるようにもなる、という作話的なメリットも大きい。

具体的には、少年漫画らしい「熱いシーン」「グッとくるシーン」を優先するため、あえてコマの時系列をズラしたり、話の整合性・理屈付けの説明をあまり深く掘らなかったり、(現段階では)最低限の人物描写で話が進行していることが挙げられる。

 

コマの時系列については、個人的に最も光っていると感じているシーンが下である。現状1番好きなシーンでもある。

 

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直近のページから読んでいかないとイマイチ説明しづらいのでもう分かっているものとして省略するが、平均的な漫画だったら 戦闘開始→サブキャラの諸々終了→戦闘決着→エピローグ という、分かりやすさ重視な流れになると思う。

だけど本作は サブキャラの諸々ほぼ終了→戦闘開始→戦闘ほぼ決着→サブキャラ諸々完全終了→戦闘完全決着→エピローグ と、かなり変わった流れになっていると思う。

これって要は横軸を減らした分の"溜め"の無さを、コマの時系列を入れ替えることで擬似的な"溜め"にして、より縦軸の盛り上がりを大きくしているということだと思うのだ(多分)

作中で何かしているワケではないので実際にシナリオ的な"溜め"は作れていない。だけど僕みたいな「溜めストーリーはつい流し見しちゃう」な人にとっては、どちらかと言えば物理的時間 (「シーンを見るタイミングの違い」みたいなニュアンス)が"溜め"ということに錯覚しがちなのだ。

なので、一気読みしていても「この展開、要る?」や「雑に扱われる新キャラ多いな…」みたいな、「毎週盛り上がるための盛り上がり」のような場面がなく、とてもスマート。

 

一方これは諸刃の剣でもあり、単純に「読みづらいわ!」という人が居ても全然おかしくない構成だと思うし、シーン中心で展開するので登場人物(特に主人公)の感情の機微が少し分かりづらかったり、よく考えると「ん?」となるシーンもある(特にシャルと母親の別れ際の整合性)

それらが、この圧倒的な瞬間最大風速の中に薄まってしまったり、「ここのシーン良かったな〜」という読了感に薄まってしまう、僕はココが非常に面白いなと思うのだ。

 

 

また、本作は復讐がテーマなだけに、どうしても暗い展開に行きがちなのだと思う。主人公も一見ダークヒーローな感じだし。

だけどソコに「主人公は青臭い一面もある」という串を1本刺すことによって、意外なほどストーリーが爽やかなものに生まれ変わっている。これは絵的な意味での爽やかではなく、シナリオが生み出すカタルシスが爽やかなモノになる、という意味。

そして、作中の殆どのイベントで主人公が中心に居るので、人が死のうが腕が欠損しようが親父の形見が折れようが、重いのは重いんだけど、どこか爽やか。確実に主人公によって救われる人間が生まれることで、敵は明確に・仲間は増える。

暗いテーマの中で主人公の善人性が光る。非常に少年漫画らしい作りでとても好感が持てる。

 

例えば、シャルの母親の件。こういうのって、昨今では割と「母親もクズ」みたいな描き方をされて、そこから深く暗い話になって…みたいな展開をよく見かける。

しかし本作はあえてソレをせず、あくまで当人の問題ということでシャルの内面を描き、悩ませ、最後に主人公に関わることで心のトゲが完全に抜ける、という描き方となっている。

 

テーマ的に、いくらでも暗く深い話にできると思う。だけどソコをあえて少年漫画らしく描くことで生まれる独特な風もまた、本作の大きな魅力。善し悪しは置いといて、僕は好き。

 

 

終わりに

興味本位で読んだにしては大いにハマりました。さすがに話題になってる漫画だけはあるなと。

ただ、1,2話を除いた1巻まるまる分と、2巻の超最初だけ(少なくとも初見では)ぶっちゃけあんまり面白くないなと。僕自身が『ソウルイーター』的な天丼芸や、のっぺりした話があまり好きじゃないってのが大きいとは思います。それ以降はずっと面白いのは付け加えておきます。

あとは戦闘が若干説明くさすぎる『HUNTER × HUNTER』的な戦闘も、個人的な好みで言うと微妙。少なくともこの漫画は絵で語る方が見応えあると思いました。

 

まだまだ本作について全然語れてませんが、1番2番で好きなポイントを書いた時点でそれなりの字数になってしまったので、ひとまず終了。読んで頂きありがとうございました。

4巻出たらまた書くかもしれません。