暇日記

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ゲームと漫画のブログです

漫画『ワールドエンブリオ』感想。

 

最近他人にオススメされた漫画を素直に読む、というムーブがマイブームでして、色々なジャンルの作品に手を出している今日この頃。

僕も人間なので当然好き嫌いはあり、オススメされた漫画が全て面白かったかと言われるとNO。だが、どの作品もオススメされる程の漫画なのは間違いなく、内容自体は普通に面白いものばかり。どちらかと言うと「面白くない」というより「好きじゃない」という方が適切だろう。

 

そんなオススメされた漫画たちの中で、表題の『World Embryo(ワールドエンブリオ)がまさかの「面白い」と「好き」が両立されていた漫画で、平日仕事アリにも関わらず1日で読み尽くしてしまった。仕事サボって漫画読む瞬間が1番気持ちええんじゃ。

 

そんなこんなで全13巻をバチコリ読んできたので以下より感想を書いていくよ。散文乱文お構い無しなのでどうぞ気楽にお付き合いください。

 

ワールドエンブリオ(1) (ヤングキングコミックス)


かんそう

この漫画を読んでいて思ったのが、とにかくイベントが多いなと。

 

主人公の名前くらいしか覚えてないようなタイミングで急に能力バトルが始まり、終わったかと思えばその次の話でスグに能力覚醒イベントが始まり、ひと段落したかと思えば 今度は赤ちゃんを守るための頭脳バトルが始まり…と、本当にイベントが多かった。

しかし、それらは全て流れとして繋がっており、コッチの問題を解消(解決ではない)したらアッチの方に問題が!→今度はソッチに問題が!と連鎖的にズルズルと沼にハマっていく感じ。

そんで、それら全ての原因は主人公の「嘘」に起因していて。敵味方問わず嘘をつきまくった自業自得として、そのツケが全て自分に返ってくるシナリオ。そして主人公の嘘ツキ癖は本編通しての目標だった天音姉(幼なじみ)に起因していて…という具合に、話が進むにつれて主人公をどんどん深掘っていくタイプの物語。

 

なのでガワだけ眺めると「厨二主人公」「能力バトル」「頭脳バトル」「家族愛」「恋愛」「謎解き」「子供から大人への成長譚」etc…と一見ごった煮なんだけども、そこには「嘘」という1本のテーマがちゃんと通っており、散漫な印象は全く受けない。

むしろ、枝葉として、やや食い気味なまでにイベントを詰め込むことで、なんというか「スピード感」というか、「瞬間最大風速」というか、目を休ませる暇を与えないほどの展開の速さを生み出し、これまで読んできた漫画と比べても、かなり独特な読み応えだったように思う。

「この盛り上がりでまだ2巻?!」「この謎の真相をこんなに早く明かすの?!」と、読んでいてダレる瞬間があまり無いというか、とにかくジェットコースターのような読み心地で物語が進んでいく。脳ミソが痺れる。

 

だが、それは物語における所謂「溜め」の無さと表裏一体で。

小刻みに熱い展開はあるんだけど、感情が溢れ出すような激アツ展開は、後述する「主人公覚醒回」と、終盤の数回程度。それらは序盤から積み重ねたモノがあるからこそ爆発していて、恐らく作り手側も承知の上で重要キャラの重要イベントにその爆発をフォーカスしたんだろうと思う。これはどちらが良い悪いの問題では無いので難しい……。

 

 

そして、それらを破綻なくまとめあげた作者の手腕に脱帽。この手の物語って、後から振り返ると大体「結局これってなんだったの?」「あの伏線どこいったんだ…」みたいなコトになりがちなんだけども、本作においてソレは一切無い。

なんなら読み返すと「ここで既にこの伏線が?!」「このキャラってこんな段階から居たんだ…」と、作者の揚げ足を取るつもりが、「こんなのも気づかなかったの?」と逆にコチラの揚げ足を取られるまである。

ただ、伏線ばら撒きつつギュインギュイン話を進める中盤までは文句ナシに面白いのだが、その伏線を回収しまくる終盤あたりになると、少し話が理屈っぽくなり「スピード感」のようなモノは感じづらくなってしまう。熱い展開は相変わらずなんだけどもね。

とはいえ、それ程までに違和感なくまとまった漫画もかなり久々で、結構マジで『鋼の錬金術師』以来の感動を覚えたかもしれない。これってもう、勲章ですよ……。

 

 

本作で1番好きだったのは「子供から大人への成長譚」をガッツリ描いてくれたこと。

僕は漫画、というか媒体関係なく、物語そのものに対して最も重視するのが「キャラの成長」で。

だから『スティール・ボール・ラン』とか大好きだし、『エヴァ』のようなちょっとずつ前に進んでまた戻るような話も好きだし、『仮面ライダー響鬼』のような周囲の大人に守られながらゆっくりと階段を登っていく話も大好物である。

ということで、例に漏れず本作の主人公もマイナスからのスタートだった。「自分のため」に嘘をつき、「自分のため」に戦い、「自分のため」に子育てをする、とかなり「子供」なキャラクターだった。その辺の描写は割と解像度が高く、読んでいて少し恥ずかしかった。誰かの体験談だろコレ?!ってなる。

 

そんなヤツでも、周囲はガッツリ助言を贈ってくれたり、手を差し伸べたりしてくれていて。でもソレに(本当の意味で)気づいていなくて…、と中盤までは主人公が厨二ムーブをするだけの漫画と言ってもいい(それでも面白いのが凄い)

そんで中盤に「自分のための嘘」が原因で多くのものを失い、そこに来て初めて、今まで周囲から貰った言葉や、差し伸べてくれた手の意味を理解する…、と言葉にするとベタな展開なんだけど、それを漫画自体の構成でイイ感じに脱臭できていて、なんだか普通に感動してしまった。ネーネ(赤ちゃんキャラ)がガチ泣きする所とか読んでいてちょっとウルっとしたし。

そこの「成長」がしっかり描かれているからこそ、ラブコメ要素が急に足されるのにもそれなりに納得感があるし、ずっと執着していた天音姉が敵に回っても、不安な感情より「今の主人公なら…!」という期待感の方が自然と大きくなる。陽キャ化したのはちょっと解釈違い感もあったが、まあ得てして人間そういうもんなんだろうと勝手に納得した。やはり女か。

そんでラストは明るく終わる、とおおよそ見たかったモノは全て見ることができた状態で物語は幕を閉じる。ぶっちゃけハッピーエンドだったらどんなにアレなシナリオでももそれなりに面白く感じてしまうのはあるんだけども、この物語に関しては絶対にこれで良かったと思う。

今までは無意識に利己的な嘘を吐いていたのに対し、ラストの展開は利己的な嘘を「選択」して吐いていたのも成長をハッキリ感じられて良い。結果は一緒でもその本質が違う、というヤツです。案外「過程」に眠っている金塊は多いってコトなんですかね。

 

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あと激アツシーンで誤字見つけてしまって爆笑してしまった。余計な時だけ目ざとい。

 

 

終わりに

思いがけずどストライクな作品に出会ってしまいました。友人には感謝の舞です。

 

他人のオススメ漫画を読むムーブは、もちろんお金はかかりますが、それ以外に関してはプラスなことが多いような気がしていて。個人的にオススメです。

自分目線で考えても、やっぱり布教が成功するのは気持ちいいですし、布教成功とまでは言わずとも、オススメしたものを摂取してくれるのはなんだか嬉しい。そして「俺はお前のオススメ読んだんだから、お前も俺のオススメ読むよな?」と堂々と言えるようになるのもアツいです(悪い顔)

 

ということで、とても面白かったので読んだこと無い人は是非読んでみて欲しい。オススメです。

わーわー騒ぎましたが僕からは以上です。読んで頂きありがとうございました。