↑いい笑顔だ。
「完全新作」の4字に騙された経験は無いだろうか。
主にシリーズものを作っているゲーム会社が「完全新作」を謳っているとなれば、それまでのシリーズを一旦区切って、新シリーズを展開すると思うのが普通だろう。実際筆者はそう思って本作を購入したのだが、残念ながら、情報収集の大切さを分からされる結果となってしまった。まあ何が言いたいかっていうのは後で詳しく話すんでね…。
ということで今回は『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』の感想兼レビュー。ちなみに副題は『トキノタイカ』と読む。
制作会社はアクアプラス。この会社のゲームはホワルバくらいしかやったことないんですが、タイトルだけ知ってる作品もちらほらある。それぞれ話を聞く限りだと、どのゲームも面白さを追求というよりはシナリオに力を入れている印象。それはキャッチコピーである「RPGを面白くするのは、物語だ」からも読み取れる。
そんな本作、シナリオは良いんだが、ゲーム部分でかなり印象を損なっている、というのが率直な感想。特に序盤6,7時間の苦痛を耐えられるかどうかが全てであり、乗り越えると面白さが顔を出してくる、といった塩梅。
といったところで、前置きはここまでにして詳しい感想へGO。全ての要素に触れると何万字あっても足りないので、気に入った、もしくは気になった要素のみをピックアップしていきます。
また、都合上軽度のネタバレが入るが、核心に触れるものでは無いので安心されたし。
目次
概要
とりあえず公式サイトのあらすじをポン。
大國ヤマトに属する辺境の國エンナカムイ。
この地に一人の青年が母と妹の三人で暮らしていた。 ある日、青年は國の皇の依頼により、ささいな異変を調査している最中、一人の少女と出会う。謎めいたその少女から告げられる思いがけない言葉──
亡くなったはずの父親が今も生きている、と。
少女に父の面影を見出した青年は、真実を知るため、地図にない謎の國『アーヴァ=シュラン』を目指し、故郷を後にするのだった。数多の困難を乗り越え、青年は父の足跡を追う。
志を共にする仲間たちとの出会い。
奔走と高揚、そして挫折と別離。
数奇な運命は、やがて青年を大いなる刻の最中に誘う──これは、後に『うたわれるもの』となる或る青年の物語である。
うん。これ『うたわれるもの』シリーズのスピンオフでした!完全新作とは一体……。
…まあTwitterの広告でチラ見して、そこで気になって購入!の流れだったので正直こちらの情報収集不足が原因であることは明らかなんですが。
とはいえ、『うたわれ』をカケラも知らない筆者ですら十分に楽しめた作品であったのでそこは素直に良かったと思う。。既プレイ勢だと更に楽しめるんじゃなかろうか。
あらすじを見る限りどうやら過去編らしいので、恐らく本作中で明かされない数々の要素は本編でガッツリやるんだろうなと勝手に推測してます。
↑推し。
今作は典型的かつコッテコテのJRPG。基本的に、話が進む→ダンジョン攻略→ボス戦→話が進む のループ。非常にわかりやすい。
あと、もうこれは最初に言ってしまうが、UI関連は正直なところ十数年前のRPGレベル。
これ令和のゲームってマジ?!って初っ端から思ってしまうくらいには割とヤッてる。
具体的には、セーブポイントに行かないとセーブ出来ない(オートセーブは何故かある)、ファストトラベルが最初から出来ない、ジャンプは出来るが段差は越えられないし降りられない為意味の無いアクションと化してる、ダンジョン最奥のボスを倒した後また徒歩で入口まで帰らなければならない等々。パッと思いつくだけでもこんだけある。いや〜昔のゲームはこんなもんでしたね!懐かしい〜。
↑この段差、ジャンプで越えられません…。
懐かしい〜じゃねえんだよ(半ギレ)
別に元エロゲの会社にそこまで多くのものを求めるつもりはないが、何を参考にUIまわりを作ったのかは気になるところ。もしかすると10数年前にタイムスリップしてたのかもしれない。
しかし人間というのは不思議なもので、これらの不便には全て慣れる。慣れてしまう。よってこれらに慣れてきて、かつファストトラベルを解放してからが漸くゲームスタート。そしてそこまで行くのに約6,7時間かかる(かかった)為、その時間を苦痛と表現してみたワケです。ここは本作攻略において最初にして最大の壁と言ってしまってもいいかもしれない。これから遊ぶ方はこの壁を頑張って登ってください。僕は"上"で待っています。
↑ボスを倒した後は徒歩で入口まで戻ることになる。特にイベントもない。
とはいえ、正直UIに関しては割とノウハウの部分も大きいと思うので仕方ないっちゃ仕方ない。ソシャゲのUIがだんだん進化していく様を目の当たりにしてきた人間としては、黎明期のソシャゲに比べればこれくらいはまあ許容範囲。慣れる。
そもそも本作は、『うたわれ』既プレイの方々へ向けて作られているゲームなので(多分)、この辺りはキャラ愛で何とかしてくれーッ!って感じなんだとは思うんですけどね。主人公達への思い入れがある前提で会話やら掛け合いが作られていたので、筆者は序盤割と置いてけぼりでした。逆に各キャラの「ひととなり」が分かってからはスっと感情移入できるようになって、そこからは結構前のめりのプレイ。キャラとシナリオは文句なしの花丸でした。
↑デカい。
キャラ・シナリオが良い
本作はマジで不快キャラが少ない。ってか敵幹部の1人だけしかいない。
メインキャラ4人は当然として、脇を固めるサブキャラ達も人格者揃いだった。ギャグキャラにちょっとクセのあるヤツが居たかな?くらいのもの。まあ不快キャラは基本的に物語の推進剤でもあるので、居ないならそれはそれで平坦なシナリオになりがちではある。一応フォローしておきます。
↑メインキャラ四人衆。
オシュトル、ミカヅチは良きライバル関係で終盤はほぼダブル主人公みたいになってる。ムネチカは他3人の姉ちゃんポジで、シューニャは逆に他3人の妹ポジ。裏主人公でもあるのかな?
ということでメインキャラはこの陽キャ4人で、コイツらの旅と成長を見守るのがシナリオの大筋。
そのシナリオはといえば、オシュトルのオリジンとして良く纏まった話であった。とはいえ本作登場時から既に、人に優しく自分に厳しく、といった武人肌な所もあり、ギャグもこなせるという、既に完成されたキャラであった。
そんなオシュトルの本作通しての課題はシンプルな「強さ」の獲得。心が折れては実行する以前の問題だし、かと言って心だけ強くても力が無ければ実行できない、ということ。心身一体とはよくいったものである。
要は、登場時点で既に人間レベル80だったオシュトルの、残り20レベル分の「強さ」を獲得するための物語であり、ほぼ全編通してオシュトルが迷い、オシュトルが決断し、オシュトルがバチッとキメる話だった。原作の方の人気が高いキャラらしいので、ファンには堪らないシナリオだっただろう。何も知らない筆者ですら熱くなったので、原作分の積み重ねがある人はもう発火してるまである。
陽キャ四人衆がメインキャラってのもあり、総じてかなり陽性のシナリオ。シューニャ関連は暗い話を匂わせる描写があるにはあったが、それらはかなり圧縮されていて、ひたすら陽!陽!陽!である。
↑本編の示唆的なアレ。
ただオシュトルの物語としては良くできていた反面、話全体を俯瞰すると気になる点がちょくちょく出てくる。というのも恐らく本作のストーリーは本作だけで完結するよう作られていないからだ。いきなり禅問答のようになってしまったんだけど、実際そうだから仕方ない。
具体的には、あるキャラがED後のエピローグにて急に不穏になる。そして何やら不穏な雰囲気のまま物語は幕を閉じる。続きは次回作で!ってことなんだろう。他にも消化不良の要素が山ほどある。これ以上は本編のネタバレが入ってしまいそうなので止めておく。
正直ちょっとキレそうになったので、これから遊ぶ方は是非とも参考に。本作だけでは完結しません!!!
思うに、終盤にヒキを作っていいのは毎週放送されるアニメや特撮だけじゃないかと思う。ゲームでこれをやられると、何年待たないといけないのそれ…って気が狂いそうになるからだ。筆者は既に気が狂いそうです。
↑時代に合わない近代施設は何か理由があるんだろうか。うたわれ本編読むしかねえ。
ちなみに、主題の『モノクロームメビウス』は、本編中では単語こそ出なかったものの、メビウスってのが意味深なのもあり、続編次第でかなり深い意味になりそうな予感がしてます。
そして、うん。副題の『トキノタイカ』、オメーはそんなに深い意味無かったね?!いつタイトル回収するかとワクワクしてたら、いざ出てきた!と思えばサラッと流されてて思わず椅子から転げ落ちそうになった。これからやる人はあまりタイトルに深い意味を求めない方が吉。
戦闘・育成関連
戦闘はオーソドックスなコマンド式。通常攻撃、特技、防御、アイテム、逃走。そこに「連環」システムと、「ハル」コマンドが加わって他作品との差別化が成されているカタチ。
特に「連環」は中々面白い要素で、
↑左上の円が「連環」
戦闘中の画面左上に出ている「行動順番を表す図」を「連環(れんかん)」と言います。
三重輪の上をキャラクターが時計回りに移動し、指定の場所に到達すると行動が可能になります。
輪の上を移動する速度はキャラクターの「素早さ」によって決まり、内側になるほど一周の距離が短い為、 次の行動順番が回ってくる間隔が早くなります。
敵に攻撃を与え続けると「よろめき」状態になり、さらに攻撃すると「崩し」が発生します。 相手を崩すと内側の環へ移動でき、崩された方は一番外側の環へ弾き出されます。
説明が複雑になりそうだったので公式サイトのを載っけるが、要するに円の内側へ入るほど行動回数が多くなるので、いかに敵の「よろけ、崩し」を取り、円の内側へ入るかに重きを置いたシステム。このシステムのおかげで雑魚はサクサク、ボスはじっくり、といったゲームバランスとなっている。
これのおかげで戦闘は中々面白いモノに仕上がっているんじゃなかろうか。筆者はかなり楽しんで戦闘してました。ただし終盤になると「円の内側に移動できる魔法」を覚えるので、そこからは連環を使った戦闘というより派手なダメージで脳汁を出すゲームに変化しますが(もちろん連環も多少は意識する)。なお、これは残念要素という訳ではない。なんとな〜く感じたと思うが、正直「連環」はめんどくさいと感じる瞬間もあるので、戦闘自体に飽きてくる終盤はダメージ出しまくる戦闘の方が楽しかったり。これが意図的かどうかは分かりませんが、この辺の調整はかなり面白かったのもあり素直に賞賛。
↑奥義カットインもカッコいい。
ただ1つ惜しい点として、「よろけ、崩し」を取るために弱点を突くのは割と常套手段なのだが、肝心の弱点がイマイチ分かりにくいのだけはちょっと気になった。なんというか、こう、このビジュアルの敵にはこの技!みたいな視覚的分かりやすさが欲しかった。一応ゲーム内図鑑を見ればある程度は分かるようになっているが、それにしてもちょっと不親切かなと。それだけ気になりました。
ちなみに「ハル」は2,3回まで行動(攻撃)できる身代わりユニットといったコマンド。序盤だと頼りになるが終盤は火力不足気味だったのであんまり使わなかった。鍛えれば強いかもしれませんが。
育成関連だが、レベル制なのでレベルを上げるとステータスが上がる。普通です。
が、レベルアップ毎に貰えるポイントでちょっとしたステ振りができる。極論、何のステータスに振ってもそれなりに恩恵はあるのだが、筆者的オススメかつ本作序盤における最重要ステータスは間違いなくHPだと思う。次にMPと筋力、知力が同率。
初めのうちは脳死で筋力や知力に極振りしていたが、序盤を過ぎたくらいのボスで、ほぼ2パンでキャラが戦闘不能という事態が起きたんですよね。なんならその辺の雑魚相手でも一撃で3割消し飛ばされたりした。
といった背景もあって、そこからは急いでレベリングしてはHPにガン振り。この間は相当に虚無だった……。その分撃破時の達成感がスゴかったんですがいやこれそんなゲームじゃなくね?!感もスゴかった……。これからプレイする方には是非参考にして頂きたく存じまスー……。
↑悪いことは言わないから体力に振ろう!
なお肝心の経験値は、雑魚狩りではかなりしょっぱい数値しか貰えない。というわけでサブクエの報酬がメイン経験値となるワケだが、序盤のサブクエはかなり数が少ない。これ如何に…。
総じて特に序盤の育成がキツめのバランスとなっており、必要経験値の初期値が妙に高いので、サブクエが少ない(しかもファストトラベルも無い)序盤は雑魚狩りレベリングになる。そして序盤の雑魚から入る経験値が妙にしょっぱいのも相まって、やはり序盤6,7時間は本作最大の壁かもしれない。
逆に、中盤からは要求経験値に対して雑魚から貰える経験値が多くなるので、案外サクッとレベルが上がる。マジで気づいたら上がってる。もしかして序盤キツキツなのは連環を使った戦闘を楽しんでもらう為の このバランス…?いや無い(反語)。
その他
風景のグラフィックはかなり良いと思う。うたわれ世界ってこんな感じか!と感動する人が居るかもしれない。
それに比べてメイン4人以外のキャラクターモデリングがちょっとな…ってのが多数。出現する敵含め、うーーーんと唸ってしまうのが本音ではある。ただこれらも結局は慣れ。慣れる。
「一昔前のゲームなんてこんなもんこんなもん…」と呪文を唱えながら遊ぶと案外慣れるものである。いや、一昔前のゲームでもNPCのっぺらぼうは中々無いけどね?!不意にのっぺらぼうがイベントで映ると普通に怖いので、そういった意味でも次回作はこの辺の改善を期待したい。
またマップの広さに対して、移動関連の配慮の無さは若干気になった。せっかくのキャラゲーなんだし、掛け合いが少しでもいいから欲しかったかなと。ダッシュが何故かスタミナ制だし。かと言ってダッシュしなくても敵には追いつかれないので、スタミナゲージはマジで存在意義が分からなかった。特に何も考えず要素だけ取り入れるのは、あまり良いものづくりとは言えないぞアクアプラス。なに、失敗は成功のもと。これから改善していけばいいんだ。次回作は普通に購入予定だから頑張ってくれ。
総括
おおむね満足
うたわれ未プレイ勢の感想なんでアテになるかは定かではありませんが、なんだかんだ普通に楽しめました。面白かったです。
ただやっぱUIの不便さをガン無視して面白いとこだけ楽しむ、というのもまあ無理だよねって話。
「RPGを面白くするのは、物語だ」のキャッチコピーはそれなりに果たされていたとは思うが、その面白い物語が、ゲーム部分の印象の悪さで損なわれてしまっていたのは何とも皮肉な話。
しかし、筆者は本作をフルプライスで購入しましたが、特に後悔も何もなく、なんなら『うたわれ』3作app storeからダウンロードしてきました。そのくらいシナリオは面白かった。
この3作読んだ後だとまた本作の感想も変わってきそうなので、そういった意味でも楽しみです。ちょいと長そうな予感がするので休日潰すコトになるかもなあ。
前述しましたが、続編でたらスグに購入予定なんで、諸々改善を頑張って欲しいですね。
ということで今回はここまで。うたわれ未プレイ勢には間違ってもオススメできませんが、既プレイ勢ならやる価値は十分にあるのでは、というイマドキ小学生でもそんなん言わねーぞって意見を置いておくことにします。
では。
↑クリア後に各声優からのボイスメッセージが聴ける。こういうの、凄くイイです…。