「〜君、今度ボウリング大会あるから申し込んでおいたよ」
先日、上司から急にそんなことを言われて「アッはい」と反射的に返事をしてしまった。
件のボウリング大会、参加自体は自由らしいのだが、どうやら各部署から最低1組(2人1組)は出場させないといけない縛りがあるらしい。そして大抵の場合、そんな役回りは若い順にやらされる。つまりは僕と後輩のことである。
しかし、部署内には他に運動好きの人が居るのに何故?と思って理由を聞いてみると、まあ色々理由はあったようだが、要するにあまりにも出不精な僕に気を使ってくれたようで。
確かに
- 「連休何かやった?」
→「無限ゲーム編です」
- 「休日何やってるの?」
→「無限ゲーム編です」
- 「大型連休は実家に帰るの?」
→「無限ゲーム編です」
そりゃ心配にもなる。しかも上司は割と活発な人なので他の人より余計に心配になるんだろう。気にかけてくれるのは非常にありがたい話であり、その気遣いそのものはとても尊いモノだと思う。僕の意見を聞いていないというだけで。
そもそも僕はボウリングの楽しさがイマイチ分からない人間である。ボールを放ってピンを倒す作業のどこに楽しみを見出すのか、心の底から理解できない。まあボタンを押してキャラクターを動かす作業に熱中してる男が言える事では無いんだけども。
ぐだぐだ言っても申し込みされた事実は変わらない。ここは諦めて楽しむしかないな、と気持ちを切替えてその日を終えた。ちなみに部署内の運動好きの方は普通に参加するらしい。何となくモヤっとしたのは内緒だ。
修行編
兎にも角にもボウリングなんぞ久しくやっておらず、後輩もそんな感じだったので、とりあえず本番までに1回練習がてら2人でボウリングに行くことに。
皆それなりのスコアの中で自分だけカスみたいなスコアだった時の空気感、想像するだけで寒気がしてくる。それを笑い話にできるトーク力があれば良いんだけども、生憎とソレが出来ていればこれまでの人生いくらか楽だっただろう。
それなりに上手かったら、仮にその逆の場合でも調節が効くし、やはり練習しておくに越したことはない。いわゆる修行編だ。少年漫画において基本不評になりがちなアレである。
とりあえずボール(でいいのだろうか?)を選ぶ。
12ポンド、ゴリラ用のボールなのかこれは。11ポンド、重すぎて無理。10ポンド、そのうち腕が吊りそう。9ポンド、なんとか放れる。これだ。なんかレディース用とか書いてあったが見て見ぬふりをする。横目で後輩を見るとほぼ即決で12ポンドを選んでいてなんだか悲しい気持ちになった。弱者男性は辛い。
その9ポンドを硬く抱いて、レーンに立ち、いざ放る。当然ガター。続く2投目、ガター。ガター。ガター。ガター。
鬼のようにガターを積み重ねる僕。ここまで来ると情けなさより笑いの方が勝る。2人で爆笑。とはいえ、幸い後輩もボウリング経験はそんなに無いようでスコア110付近位だった。僕は80付近。
こりゃイカンと思って色々と試行錯誤するフェーズに入ると、意外にも簡単にスコアは伸びた。そして試行錯誤をしているうちにちょっと楽しくなってくるのも良い兆候だ。楽しくやった方が実力も伸びやすい。
まずは放る角度。先端のピンに対してやや鋭角気味に直球を放りむと大抵の場合は片側が多く残り、2投目で残りを倒しスペアを狙う。
本来は回転を掛けてストライク狙いが王道らしいが、まあこればっかりは付け焼き刃じゃどうにもならない。故に常に直球。とにかく真っ直ぐ、狙った場所に投げることだけを考える。ここを絞るだけでもスコアは割と安定した。
そして投げるフォーム。当然正しいフォームなんぞ知らないので、とにかく真っ直ぐ投げられるフォームを探す。
色々試した結果、もう体全体の事は考えず、とにかくボールを地面スレスレで、腕のスジを伸ばす感覚で放ることだけに専念することにした。指はかなり浅めに引っかける感じで、投げた後の腕を反対の肩に絡ませる勢いで投げるのだ。
こうすると大体スーッと真っ直ぐ行ってくれる。これは恐らく王道のボウリング攻略ではないと思うが、短時間でそこそこの戦果を上げる前提ならば案外王道より邪道の方が効果が出たりする。元々そこまでやり込むつもりもない。今回は邪道に手を染めることにする。
後輩の方もそれなりにコツは掴めたようで、スコアは順調に上がっていた。後輩160僕130くらい。まあ1日だとこんなものだろう。
その日は2人して攻略の成果を話しながら飯食って解散となった。あとは本番を待つのみである。
本番
いざ当日、まさかの火曜夜7:00~とかいう気が狂ってるとしか思えないような時間に開催。アナタ方も明日仕事じゃないンスか……。
いざレーンを指定されると、僕と後輩の2人かと思いきや、別部署の若い女の子2人と一緒の共用レーンらしく、この時点でちょっと嫌な予感。1回戦は女子2人もといメスガキ2人が相手らしい。
僕は陰の国出身の陰者だが、後輩は陽の国出身。基本的に女子2人の相手は任せつつ、僕はちょくちょく合いの手を入れてくるなんか暗い人、のポジションを目指して立ち回る。鬼滅の刃でいうところの隠だ。なんか話を振られそうだったらそれとなく後輩にミスディレクションするのも忘れない。黒子のバスケを読んでいて良かった。
開幕の挨拶も済ませたところで大会開始。チラッと見てた感じ、意外と皆上手くてやっぱり練習していて良かったと思った。学生の頃、調理実習で「どーせ皆テキトーだろ」とメニューを見ずに作っていたら、意外と皆ちゃんと作っていて恥ずかしい思いをした記憶がある。過去の失敗は未来への助走だ。人間とは成長する生き物である。
ちなみに対面2人のボールは2つとも9ポンドだった。僕も9ポンド……。つまり異端なのは後輩ってコトか(現実逃避)。
スコアの方は、後輩以外の人に見られて謎に緊張してしまったのか、練習の時ほど数字が伸びない。自分の体を動かす手順が頭にあるのに、どうにも体とボールが思い通りに動いてくれない。
部活の大会の時も覚えがあるが、こういう時は何をやっても上手くいかないので、調子を元に戻すためのルーティンを組むべきであった。が、1回練習した程度のボウリングでルーティンなんぞある訳もない。だが練習でやってないことをやっても更に傷口を広げるだけだ。故に徹底を極める。
そんな抵抗も虚しく100程度のスコアに収まってしまった。人間とは成長しない生き物でもある。
しかし後輩は頑張ってくれて、なんとか対面のスコアを僅かに上回ることが出来た。勝ったッ…!第3部、完!!
と思っていたら、どうやら特別ルールで女性陣は1人あたりプラス15点のハンデスコアが与えられるらしく、対面2人で30点増しなので普通に負けた。そんなルールを後から言うな。
勝敗がついた後、メスガキ2人から「わざ負けしてくれたんですよね?」「軽いボールだとストライク狙いにくいから仕方ないですよ!」という超ド級の煽り、もとい気遣いの言葉を頂いた。すまない……俺が弱いばかりに気遣わせてしまってすまない……。
そして後輩よ。俺が情けないばかりに君まで一緒に雑魚みたいな扱いをさせてしまってすまない…
後日
振り返ってみるとなんだかんだで楽しかったボウリング大会だった。後輩も「来年は優勝しましょう!」と言ってくれたので「やさ男だ……!」と感動してしまったよね。
あと実は負けた時ちょっと悔しかったので来年もワンチャン行くかもしれない。まんまと上司の策に乗せられたカタチになったワケだ。
また今回の件で、相変わらずボウリングそのものの楽しさはイマイチ分からなかったが、スコアを上げる過程自体は普通に面白かった。初心者の内は何のスポーツも楽しいと言うが、なるほどこういうカラクリか。
健康診断で運動不足を指摘された身なので、今後は何かしらサークルに入ってみるのも悪くないかもしれない。
そんなこんなでボウリング楽しかったよって日記でした。
ところで脇腹がエグめの筋肉痛になったのはフォームが悪いってことなんでしょうか。